DHLサプライチェーンジャパンは、ベイクルーズ向けの千葉県柏沼南物流センターにASRSを導入しました。約60台のロボットと約1万800個の専用ビンで、拠点を拡張せず物量増加に対応する倉庫自動化が本格化しています。[1][2][3]
倉庫自動化が実装段階へ、DHLのASRS導入が示す物流拠点の新設なき成長戦略
物流拠点の成長には、これまで「建物を増やす」「床面積を広げる」という選択肢が付きまとってきました。しかし、DHLサプライチェーンジャパンがベイクルーズの柏沼南ロジスティクスセンターに導入したASRS(自動保管・搬送システム)は、その前提を変えます。約60台のロボットと約1万800個の専用ビンによって、拠点を拡張せず、今後約5年間の物量増加に対応できる処理能力を確保しました。これは単なる省人化設備ではなく、既存施設の密度と生産性を高める「新設なき成長戦略」の実装です。
DHLのASRS導入が示す三つの数字
今回のASRSは、商品の入庫、保管、出庫、仕分けを一体化します。作業者が保管エリアを歩き回るのではなく、ロボットが必要な商品を作業ステーションまで搬送する「Goods to Person」型の運用です。移動時間を減らしながら、限られた床面積を立体的かつ高密度に使える点が、アパレル物流との親和性を高めています。[1][2]
約60台
商品ビンを搬送するロボット
約10,800個
運用する専用ビン
約5年間
拠点拡張なしで対応を想定する物量増加期間
1拠点
既存施設の能力を高める成長モデル
「面積拡大」から「密度・稼働率の向上」へ
ASRSの重要性は、単にロボットが人の代わりに商品を運ぶことではありません。保管エリアを高密度化し、作業者を定点に配置することで、施設内の動線そのものを再設計できる点にあります。従来の作業では、ピッカーが棚まで移動し、商品を探し、作業場へ戻るという時間が発生します。ASRSでは、システムが在庫を持つビンを作業ステーションに届けるため、作業者は検品やピッキング、仕分けなど判断が必要な工程に集中できます。[1][2]
新たな建物を建設する場合、土地取得、建設費、許認可、設備工事、立ち上げ期間が必要になります。特に首都圏では、物流適地の確保と人材採用を同時に進めることが難しく、拠点拡張は固定費と運営リスクを押し上げます。既存拠点の内部を自動化するDHLの方式は、成長投資を「建物」から「処理能力」へ移すアプローチといえます。
"The ASRS combines high-density storage with autonomous robotics to make better use of available warehouse space."
— DHL Supply Chain Japan
アパレル物流で自動化効果が大きい理由
アパレル物流は、季節変動、SKUの多さ、サイズ・カラー違い、店舗向けとEC向けの異なる出荷形態を同時に扱います。繁忙期には物量が急増する一方、閑散期には設備や人員の稼働率が下がるため、固定的な人海戦術では処理能力とコストの両立が難しくなります。
専用ビンに商品を集約し、在庫管理システムと搬送ロボットを連携させれば、注文単位に必要な商品を作業者へ呼び出せます。ベイクルーズのように店舗販売とECを併用する事業者にとっては、同じ在庫を複数の販売チャネルへ柔軟に振り分けられることも重要です。DHLは過去にも柏沼南ロジスティクスセンターで、ベイクルーズのオムニチャネル戦略を支える物流システムや自動梱包ラインを整備しており、今回のASRSはその延長線上にあります。[1][2]
省人化は「人を減らす」より「人の配置を変える」
物流業界では、ドライバー不足だけでなく、庫内作業者の採用難と定着率も大きな課題です。自動化の効果は、単純に作業人数を削減することだけではありません。歩行、探索、搬送といった付加価値の低い作業を機械に移し、人は例外処理、品質確認、在庫精度の維持、波動への対応に集中できます。
この考え方は、ZOZOが自動仕分け機やAGVを活用し、従来拠点比で約30%の省人化を実現した事例とも共通します。また、発送までの時間を長く設定して注文をまとめる「ゆっくり配送」は、出荷波動そのものを平準化する取り組みです。庫内自動化と注文・配送の集約を組み合わせることで、設備の稼働率を高め、少ない人員でも安定した処理能力を確保できます。[6][7]
倉庫自動化は輸送側の改革と一体で進む
ASRSの導入は、倉庫の中だけのテーマではありません。出荷を高速化しても、トラックの積載率が低ければ、輸送費や環境負荷は下がりません。アスクルが進めるBtoB・BtoC物流の一本化は、異なる販売形態の荷物を同じ車両で運び、配送密度を高める考え方です。庫内の省人化と輸送の共同化を接続することで、物流ネットワーク全体の生産性が向上します。[6]
さらに、長距離輸送では、青森県産りんごを対象に、自動運転トラックとJR貨物を組み合わせる実証が予定されています。長距離区間を鉄道へ切り替え、集荷と配送を自動運転トラックで補完するモーダルコンビネーションは、ドライバー不足と脱炭素を同時に扱う取り組みです。[4]
T2が参画する実証では、HVO(再生可能ディーゼル)の環境価値証書を活用し、自動運転トラックと次世代燃料を同時に検証します。倉庫ではASRS、輸送では自動運転と低炭素燃料というように、物流の各工程で自動化・脱炭素化を重ねることが、今後の競争力になります。[3]
導入企業が事前に確認すべき四つの条件
ASRSは万能な設備ではありません。導入効果を引き出すには、設備そのものよりも、業務設計とデータ整備が重要です。
- SKU特性と出荷頻度を分析し、どの商品をビン保管の対象にするかを決める。
- WMS、受注管理、在庫管理、搬送制御を連携し、在庫情報をリアルタイムで一致させる。
- 繁忙期のピーク処理能力と、ロボット停止時の代替運用を設計する。
- 設備投資額だけでなく、人員、賃料、増床費、品質ロスを含めた総保有コストで評価する。
特に重要なのは、導入前の業務標準化です。例外処理が多いまま自動化すると、システムが複雑化し、現場の柔軟性を損なう可能性があります。反対に、保管単位、補充ルール、出荷優先順位、返品処理を整理したうえで自動化すれば、設備の拡張性と運用の再現性を高められます。
日本の物流拠点は「建てる」から「賢く使う」へ
政府も、人口減少地域を含む物流の維持に向け、自動運転や物流DXの実証を後押ししています。2027年度からは離島を実証フィールドとする構想が進み、内閣府は関連経費として10億円を概算要求に盛り込みました。大規模な物流施設だけでなく、地域の小規模拠点や輸送網にもデジタル技術を組み込む方向です。[5]
DHLの柏沼南ロジスティクスセンターへのASRS導入は、こうした変化を企業物流の現場で具体化した事例です。限られた施設を高密度に使い、作業者の移動を減らし、在庫と搬送をデータで制御する。そこに配送集約、鉄道利用、自動運転、次世代燃料を組み合わせれば、物流企業と荷主は「拠点を増やさずに処理能力を増やす」ための選択肢を持てます。
今後の評価軸は、倉庫の延床面積ではなく、1平方メートル当たりの保管量、作業者1人当たりの処理件数、ピーク時の安定性、そして輸送まで含めた総コストになります。新設投資が難しい環境ほど、既存拠点の構造を見直し、ソフトウェアとロボットで能力を引き出す企業が優位に立つでしょう。
Fontes: DHL Supply Chain Japan、LNEWS、PR TIMES、LogiShift、Physical AI Times、日本経済新聞掲載情報、LogiToday、Infoseekニュース、LNEWS ZOZO、LNEWS アスクル
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