国交省が共同輸配送や帰り荷確保を支援する物流データ連携施策を進め、荷主と運送事業者の実務変革が加速しています。積載率改善や配車最適化に直結するため、コスト圧縮と省人化の両面で注目度が高いテーマです。
国交省の物流データ連携支援が本格化、共同輸配送を後押し
国土交通省が、共同輸配送や帰り荷の確保を目的とする物流データ連携支援を強化しています。複数の荷主、物流事業者、物流ソリューション提供者が標準化された情報を共有し、輸送能力を融通する仕組みです。補助率は対象経費の2分の1以内、1協議会あたりの上限は4,000万円とされ、物流DXを実証段階から現場実装へ移す政策支援が本格化しています。
1/2以内
補助対象経費に対する補助率
4,000万円
1協議会あたりの補助上限
支援事業の核心は「物流・商流情報」の共有
今回の支援事業は、単に配車システムを導入するための補助金ではありません。国交省が示す「物流情報標準ガイドライン」を活用し、荷主企業や貨物運送事業者、物流マッチングサービスなどが連携して、物流・商流情報のオープンプラットフォームを構築・運営する取り組みを対象としています。対象となる協議会には、荷主企業2社以上の参加が求められます。
共有対象となる情報には、出荷予定、納品先、貨物量、荷姿、時間指定、車両の空き状況、運行実績などが含まれます。各社が個別に保有していたデータを共通形式で接続できれば、同一方面への貨物をまとめる共同輸配送や、復路の空車を減らす帰り荷マッチングが可能になります。
「共同輸配送や帰り荷の確保、保管・輸送経路の最適化を、物流情報標準ガイドラインを活用したデータ連携で進める」
— 国土交通省「物流データ連携促進支援事業」
なぜ共同輸配送にデータ連携が必要なのか
共同輸配送の構想自体は新しいものではありません。しかし、実運用では荷主ごとに商品コード、納品条件、時間帯、パレット単位、車両制約の表記が異なり、データを組み合わせる前に手作業の確認が発生します。情報がメールや表計算ファイルに分散していれば、空車情報が把握できる頃には積載機会を失っているケースもあります。
標準化されたデータ連携は、この摩擦を減らします。出荷情報と車両情報を同じ基盤上で照合し、積載可能量、納品時間、走行距離、温度帯などの条件を満たす組み合わせを抽出できます。さらに、運行後の実績データを蓄積すれば、遅延率、積載率、待機時間、キャンセル率を検証し、次の配車計画に反映できます。
重要なのは、データ連携を「見える化」で終わらせないことです。共同輸配送の便数、積載率、走行距離、納品品質を継続的に測定し、改善効果を定量評価する仕組みまで設計する必要があります。
積載率改善の実績が示す経済効果
共同配送の効果は、すでに複数の実証で確認されています。SM物流研究会は、首都圏における共同配送で積載率が13~38%向上したと報告しています。積載率が上がれば、同じ貨物量をより少ない便数で運べる可能性が高まり、車両費、燃料費、ドライバーの拘束時間、二酸化炭素排出量を同時に抑えられます。
13~38%
首都圏共同配送で報告された積載率向上
28.9万TEU
主要6港のコンテナ取扱量
一方、輸送需要そのものも弱まっているとは限りません。主要6港のコンテナ取扱量は28.9万TEUで、前年同期比7%増となり、東京港では輸出入ともに2桁増となりました。荷動きが強い局面では、輸送能力の不足が顕在化しやすく、共同輸配送による車両稼働の最適化が競争力に直結します。
帰り荷最適化は「空車を減らす」だけではない
帰り荷の確保は、トラックの復路を有効活用する施策です。ただし、単純に復路貨物を割り当てればよいわけではありません。納品時間、積み込み場所、貨物の重量・容積、車両仕様、ドライバーの労働時間を同時に満たす必要があります。
データ連携基盤を活用すれば、往路の到着予定と復路貨物の積み込み可能時間を照合できます。運行中の遅延や荷役時間も反映することで、机上の計画ではなく、実際の運行状況に合わせた再配車が可能になります。とりわけ、温度管理が必要な冷凍・冷蔵輸送では、車両設備と荷役条件の一致が不可欠です。クールBOXチャーター便の提供エリア拡大は、温度帯物流でも長距離・共同輸送の選択肢が広がっていることを示します。
日野自動車、Hacobu、AI企業が実装を加速
政策支援と民間の技術開発が結び付いている点も、今回の動きの特徴です。日野自動車は国交省の実証事業に参画し、物流最適化システムを提供します。車両や運行から得られるデータと、荷主側の出荷情報を接続できれば、車両単位の管理からネットワーク全体の最適化へ進む余地があります。
Hacobuは蓄積データを活用した需要予測、配車、現場最適化を進めています。Mujinが掲げるフィジカルAIの現場実装や、オークラ輸送機とPALTACによる段ボールケース開梱装置も、物流DXがソフトウェアだけでなく、荷役・倉庫オペレーションへ広がっていることを示す事例です。
また、西濃運輸がAIボイスボットを採用し、集荷依頼などの一次受付を自動化した動きは、データ入力の効率化という面で重要です。電話受付の内容が構造化されたデータとして蓄積されれば、配車や集荷計画との連携が容易になります。
企業が実証前に整理すべき5つの論点
- 対象貨物と対象路線を限定し、共同輸配送の効果を測定できる範囲から始める。
- 荷主、運送事業者、システム提供者の役割とデータ責任者を明確にする。
- 商品コード、納品先、時間帯、荷姿、車両仕様などの共通データ項目を定義する。
- 積載率だけでなく、走行距離、待機時間、ドライバー拘束時間、納品品質をKPIに設定する。
- 競争上の機微情報を含むため、閲覧権限、匿名化、利用目的、データ保存期間を合意する。
特に重要なのは、参加企業を増やすこと自体を目的にしないことです。情報の粒度や更新頻度が異なる企業を無理に接続すると、現場の入力負担が増え、利用率が下がる可能性があります。まずは特定の荷主群、地域、温度帯、納品先群に絞り、効果と課題を確認したうえで接続範囲を広げる方が、継続運用につながります。
物効法対応との接続が今後の焦点
物流政策では、荷主と物流事業者の協力による効率化が一段と重視されています。物流データ連携は、共同配送の実現手段であるだけでなく、輸送量、納品条件、荷役時間、待機時間を把握し、物流改善の説明責任を果たすための基盤にもなります。
井林国土交通相は就任会見で、物流Gメンなどを活用して現場の「目詰まり」を解消する考えを示しました。制度を作るだけでは、現場の商慣行や情報分断は変わりません。公募による実証、標準データの普及、物流現場への政策浸透を組み合わせることが、持続可能な輸送網の条件になります。
今後は、補助事業で構築されたプラットフォームが、実証期間終了後も運用されるかが問われます。共同輸配送の効果を継続的に測定し、参加企業が費用と便益を納得できる形で分配できる設計が必要です。国交省の支援は、その初期投資を後押しする重要な契機となっています。
Fontes: 国土交通省|物流データ連携促進支援事業、国土交通省|共同輸配送・帰り荷確保等のデータ連携促進支援事業、LNEWS|日野自動車の物流最適化システム、流通ニュース|SM物流研究会の共同配送、LNEWS|国土交通省の物流政策、日本海事新聞|主要港コンテナ取扱量
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