改正物流効率化法の成立で、荷主側にも物流改革の責任が本格的に求められます。特定荷主にCLO選任や中長期計画、荷待ち時間の削減が義務づけられ、2026年4月施行を前に対応は待ったなしです。
2026年4月、改正物流効率化法の第二段階施行により、年間取扱貨物が9万トン以上の「特定荷主」約3,200社にCLO(物流統括管理者)の選任が義務化される。人手不足が深刻化し、運輸・倉庫業の正社員不足は65.9%(LNEWS調べ)に達するなか、荷主側に「待機時間1時間以内」「積載効率44%」という具体的な数値目標が突き付けられている。これは単なる法改正ではなく、日本の荷主企業の物流ガバナンスを根本から組み替える制度改革である。
改正物流効率化法の全体像:荷主に直接「責任」が来た
改正物流効率化法(正式名称:物資の流通の効率化に関する法律)は、従来の「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」から名称・構造ともに大きく変わった。背景にあるのは、トラックドライバーの「2024年問題」と深刻な人手不足である。国土交通省・経済産業省・農林水産省の三省は、物流関連2法の改正を通じて、物流事業者だけでなく荷主にも直接的な責任を課す方向へ舵を切った。
改正法が掲げる国全体の目標は2つに整理される。第一に、トラックドライバー1人当たり年間125時間の拘束時間短縮(1回の受渡しでの荷待ち時間等を原則1時間以内にすることなど)。第二に、トラック全体の平均積載効率を44%、さらに5割の車両で積載効率50%を実現することである。これは現行水準からの大幅な改善を前提とした野心的な目標だ。
125時間
ドライバー1人当たり年間拘束時間の削減目標
44%
全国平均で目指すトラック積載効率
法の構造は二層だ。第一層として、すべての荷主・連鎖化事業者(FC本部など)に対し、「積載効率の向上」「荷待ち時間の短縮」「荷役時間の短縮」の3点について努力義務が課される。第二層として、一定規模以上の「特定事業者」には、中長期計画の策定・提出、定期報告、そしてCLO選任が「義務」として課せられ、違反には50万~100万円の罰金も規定された。
特定荷主・特定事業者の範囲:想定3,200社のインパクト
特定事業者の基準について、現時点で公表されている目安は以下の通りである。取扱貨物の重量、保管量、保有車両台数といった指標で上位事業者が切り出される仕組みだ。
具体的には、年間取扱貨物重量が9万トン以上の荷主・連鎖化事業者が「特定荷主」「特定連鎖化事業者」となり、その数は約3,200社と推計される。また、貨物保管量70万トン以上の特定倉庫業者が約70社、保有車両台数150台以上の特定貨物自動車運送事業者等が約790社とされる。これら「特定事業者」には、努力義務ではなく実行義務が課される点が従来との決定的な違いだ。
約3,200社
年間9万トン以上の特定荷主・特定連鎖化事業者
最大100万円
義務違反時に科される罰金(特定事業者対象)
こうした規模の企業は、製造業・小売・卸売・ECプラットフォーマーなど、多岐にわたる。特定荷主となるかどうかは、取扱貨物量の集計範囲やグループ会社単位の扱いにも影響されるため、境界線上にある企業は早期に自社のデータを精査する必要がある。実際、国土交通省の資料でも、荷主側のデータ把握・可視化の遅れが課題として繰り返し指摘されている。
CLOとは何者か:部門長ではなく「経営人材」
改正法の最大の新機軸が「物流統括管理者(CLO:Chief Logistics Officer)」の義務化である。CLOは単なる物流部門長ではなく、企業全体のサプライチェーンを俯瞰し、経営戦略とロジスティクスを接続する役割を担うと定義されている。国土交通省のポータルによれば、CLOの要件は「事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者」であり、実務上は取締役や執行役員クラスの選任が想定されている。
"物流統括管理者は、荷待ち時間等の削減、積載効率の向上等に関する中長期計画を総括し、その実施状況をモニタリングしつつ、関係部署を統合する立場にあることが求められる。"
— 国土交通省「物流統括管理者(CLO)に期待される姿」より
CLOには、以下のような具体的業務が求められると整理できる。
第一に、「荷待ち・荷役時間短縮」「積載効率向上」「中継輸送・モーダルシフト」「共同輸配送」などを包含した中長期計画の策定・更新である。第二に、出荷部門・購買部門・営業部門・生産部門など、従来サイロ化していた社内組織を横断的に調整し、荷主側のオペレーション変革を主導する役割だ。第三に、運送事業者や3PLとの協働スキーム設計である。ダブル連結トラックの導入、中継輸送の組成、鉄道・海運へのモーダルシフトなど、荷主側が協力しなければ成立しない施策を現実の契約・運用に落とし込んでいく。
待機時間削減・積載効率向上の「現実」:どこまで荷主が変われるか
荷主側の実務に最も直接的なインパクトを与えるのが、待機時間および荷役時間の削減である。改正法は一回の受渡しにおける荷待ち時間を原則1時間以内とする方向性を明示しており、現在2~3時間の待機が常態化している現場では、オペレーションの抜本的見直しが不可避となる。
一方で、現場では人手不足が強烈な制約となっている。LNEWSが引用する人手不足調査によれば、2026年春時点で「運輸・倉庫」の正社員不足感は65.9%と、全業種平均50.6%を大きく上回る水準だ。単純に受付人員を増やす、荷役スタッフを増員するといった対症療法はもはや通用しない。CLOは、時間帯別の到着ピーク平準化、予約受付システムの導入、倉庫内動線の最適化、パレット単位化・標準化、さらにはDX・自動化投資まで含めて、構造的に待機要因を削る戦略を描かなければならない。
積載効率についても同様だ。トラックドライバー不足とCO2削減の両面を踏まえれば、「空気を運ぶ」余地はもはや残されていない。国は平均積載効率44%を目標としているが、これを達成するには、荷主側が発送単位・ロット・物流リードタイムの前提を見直し、共同輸配送・輸送モード転換・ダブル連結トラックの活用など、キャパシティのシェアリングを進める必要がある。実際、鴻池運輸がサントリー・ダイキン向け輸送でダブル連結トラックのルートを拡大した事例は、大口荷主同士の連携が積載効率向上とドライバー負担軽減を同時に実現し得ることを示している。
法令対応を「最小コスト」で終わらせないためのロードマップ
特定荷主にとって、2026年4月施行までの時間は決して長くない。CLO選任と中長期計画策定を単なるコンプライアンス対応にとどめるか、物流コストとサービスレベルの同時改善につなげられるかは、これから1~2年の動きで決まる。荷主企業が取るべきステップを、実務観点から4段階に整理してみたい。
第1段階は「データ基盤の整備」である。自社が特定事業者に該当するかどうかの判断に始まり、荷待ち時間・荷役時間・積載率・輸送距離・CO2排出量といった指標を、荷主自身が把握・分析できる状態を作ることが出発点だ。ここでは、WMS・TMS・受発注システム・通関データなど、既存システムのデータを統合し、可視化するだけでも効果が大きい。中長期計画や定期報告は、こうしたデータに基づかない限り説得力を持たない。
第2段階は「CLOとガバナンス体制の設計」である。誰をCLOに据えるのか、その人物がどの会議体に参加し、どの権限を持つのかを早期に設計する必要がある。ポイントは、CLOを単なる物流部門からの「出向」ポストにしないことだ。購買・営業・生産・財務といった主要機能と対等に議論できる人材を充て、サプライチェーン全体の意思決定に食い込ませる設計が求められる。経済産業省も、CLOに資する立場の者によるリーダーシップと、それを支える組織体制の重要性を強調している。
第3段階は「優先テーマの絞り込みとパイロット施策」だ。全方位的な改善は現実的ではない。荷待ち時間の長い拠点、積載率の低いルート、ドライバー確保が難しいエリアなど、データに基づいてボトルネックを特定し、そこに集中的にリソースを投下する。例えば、特定拠点での予約受付の完全Web化、中継輸送の導入、ダブル連結トラック・鉄道への切り替え、倉庫ロボティクス活用などを、期限付きで実証し、効果検証と横展開をCLO主導で進めるイメージだ。
第4段階は「中長期計画への統合と社内外コミット」である。パイロットの成果と教訓を踏まえ、2030年頃までを見据えたロードマップとして、中長期計画を再設計する。ここでは、法が求める指標(待機時間、積載効率など)だけでなく、物流コスト、サービスレベル(リードタイム・納期遵守率)、環境負荷(CO2排出)、人材確保・定着などのKPIを組み合わせ、CLOが定期的に取締役会・経営会議にレポートする枠組みを作ることが重要になる。
CLOが活かせる外部環境:DX・インフラ投資・グリーン物流とのシナジー
改正物流効率化法は単独で存在しているわけではない。直近の物流動向を見ると、CLOが活用できる外部環境の変化も進行している。例えば、NX総研の荷動き指数は依然マイナスながら、4~6月期にかけて上昇が見込まれており、物流需要は底打ちの兆しを見せている。需要回復局面でサプライチェーンを再設計できるかどうかは、中長期的なコスト競争力を左右する。
また、セイノースーパーエクスプレスによる熊本県菊池市での新拠点開設、日本GLPの先進的物流施設「Marq」への入居など、地方分散型サプライチェーンや高機能倉庫への投資も加速している。ヤマト運輸の滋賀拠点のように、ロジ機能と仕分け・輸配送機能を統合し、DX・自動化を前提とした拠点再編の動きも顕著だ。CLOはこうした3PL・物流施設事業者のオファーを比較・活用し、荷主のネットワーク再設計を主導する立場にある。
グリーン物流の観点では、JR貨物が2期連続の経常黒字を確保するなど、鉄道貨物の存在感も増している。モーダルシフトはCO2削減とドライバー不足対策を同時に達成し得る施策であり、国の政策的支援も厚い。改正物流効率化法が求める「積載効率向上」と「運転時間削減」を実現するうえで、鉄道・海運・内航RORO船との連携を前提にサプライチェーンを描き直すことは、CLOの重要なミッションの一つとなるだろう。
結論:CLOは「守りのコンプラ担当」ではなく、攻めのサプライチェーンCSOだ
改正物流効率化法の本格施行は、荷主企業にとって負担であると同時に、サプライチェーン戦略を再構築する好機でもある。罰則を恐れて最低限の計画・報告だけをこなす「守りのCLO」を置くのか、物流を起点に収益性と環境性能を高める「攻めのCLO」を据えるのか。その選択が、2026年以降の競争力の差となって表れていくはずだ。
人手不足、環境制約、顧客リードタイム短縮要求、国際物流コストの変動——こうした複雑な制約条件を前提に、データと現場、法律とビジネスをつなぎ、サプライチェーン全体で最適解を探る「CSO(Chief Supply-chain Officer)」的な役割が、これからのCLOには求められる。2026年4月までの残された時間は、単に「誰をCLOにするか」を決めるためではない。自社の物流をどこまで経営の中心テーマに引き上げられるか、その覚悟を固めるための時間でもある。
Fontes: 国土交通省「物流を取り巻く現状と総合的な対策」
Fontes: 国土交通省「改正物流効率化法ポータル・物流統括管理者(CLO)の選任」
Fontes: 経済産業省「物流効率化法について」
Fontes: RiSOKO「改正物流効率化法と物流統括管理者(CLO)について」
Fontes: LNEWS「人手不足/運輸・倉庫は正社員不足65.9%に悪化」ほか
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